遠隔画像診断システムの導入に向いている医療機関とは?料金や仕組みを解説
遠隔画像診断とは、病院やクリニックで撮影されたCTやMRI等の医療画像をインターネットを介して遠隔地へ送信し、離れた場所にいる専門医が診断する仕組みのことです。
医師不足が深刻化する日本において、離れた場所にいても専門医による画像診断が受けられるというメリットもあり導入が進んでいます。
本記事では、遠隔画像診断に用いられるシステムはどういった仕組みになっているのか、システムの種類や気になる料金、どういった医療機関への導入が向いているのかも含めて詳しく解説します。
目次
1.遠隔画像診断システムの仕組み
遠隔画像診断システムは依頼送信端末と読影サーバーに分かれ、それぞれ特有の機能を有しています。依頼送信端末の主だった機能として、DICOM接続機能、依頼画像管理機能、受診レポート管理機能、匿名化機能が挙げられます。
読影サーバーの主だった機能としては、依頼画像管理機能、DICOMビューワー機能、レポート機能が挙げられます。
画像送信する依頼元医療機関に依頼送信端末を設置し、受信する側の読影事業者や医療機関に設置されている読影サーバーにインターネット回線もしくは専用線を介して医療画像を送信します。VPN通信を行うのが一般的です。
医療画像を受信後、読影事業者や医療機関で専門医による画像の読影および診断が完了すると、その結果を報告書として送信元医療機関の依頼送信端末へ返却します。
なお、上記は各医療機関やセンターに自前のサーバーや専用機器を設置する場合の仕組みですが、近年ではクラウドに対応した遠隔画像診断システムも登場しており、この場合は自社サーバーや専用機材がなくてもインターネットに接続されたパソコンさえあれば、すぐに始めることが出来ます。
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2.遠隔画像診断システムの種類
上記でも簡単に紹介しましたが、遠隔画像診断システムは大きく分けて専用機器を設置するオンプレミス型と、クラウド上のWebサーバーに接続して利用するクラウド型の2つがあります。
それぞれの特徴を詳しく解説しましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、受信側で所有している読影システムのクライアント端末を、送信側医療機関に設置することで医療画像をやり取りする方式です。
セキュリティの観点から見ると、送信側と受信側をVPN接続や専用線で接続することは勿論のことですが、送信側と受信側がダイレクトに繋がる方式になるため、受信側のセキュリティ環境や防弱性リスクに細心の注意を払う必要があります。
また、専用機材の用意や、専用回線を準備する必要があるため導入に時間を要します。
実際に利用をスタートできるまで数週間以上の期間を要することが多いです。クラウド型
クラウド型の遠隔読影システムは、インターネットに接続できるPCがあれば直ぐに始められます。
導入にあたって専用機器の設置や設定作業は不要で、最短数日で利用をスタートできる強みがあります。
セキュリティの観点からすると、送信側はクラウド側に接続する方式となるためクラウドサーバーのセキュリティに準じます。
送信側がどこのクラウドサーバーを使用しているのか、パブリッククラウドと言われるAWS・Google・oracle等を使用しているのか、サーバーが国内にあるのか確認する必要があります。
送信側のセキュリティ状況に左右されない点は大きなメリットと言えるでしょう。ただし、クラウドサーバーがダウンしている時間ではサービスが停止する点には注意する必要があります。
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3.遠隔画像診断システムを導入することによるメリット
遠隔画像診断システムを導入することで、医療機関にとってはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
遠隔地から画像診断が可能
医療業界は深刻な人手不足に陥っており、特に画像診断のスペシャリストである放射線科医は多くの医療機関で不足しています。
放射線科医が不在の医療機関では、患者の状態や病気の進行度合いを医療画像から総合的に診断を行うことが難しくなります。
しかし、遠隔画像診断システムを導入することにより、離れた場所にいる放射線科医が医療機関に赴くことなく画像診断することが可能です。
また、依頼する医師が不在の医療機関でも遠隔読影事業者に読影サービスを外注することが出来ます。放射線科医が不足している医療機関でも画像診断機能を充実させる事が可能です。
検診読影のダブルチェック機能
検診受診者が増加傾向にある中で医療機関の読影業務負担も増加傾向にあり、ダブルチェックが求められています。
一方で、結果報告書の納期を延ばすことは難しく、検診機関としては結果報告書の早期返却がブランド化している傾向もあります。
遠隔画像診断システムを導入することで、医師が来院する院内の読影体制から医師の自宅・勤務先からの読影体制に移行することが可能です。院内読影と遠隔読影を併用する医療機関も増えています。
読影領域の充足
検査数の少ない医療画像の診断を賄うために専門医を雇用するのは不可能です。
また、非常勤医師は勤務が不安定な傾向があるため、充足させる課題を抱えている医療機関も多いのではないでしょうか。
遠隔画像診断システムを導入し、読影サービスを契約することで院内の読影領域を充足することが出来ます。
読影サービスを提供している事業者は、放射線科領域にとどまらず、眼底画像、OCT画像、内視鏡画像、超音波検査画像、心電図の読影に対応しており検討する価値があります。
4.遠隔画像診断システムの導入に向いている医療機関
遠隔画像診断システムは医療機関が抱えるさまざまな問題を解決できます。
具体的にどういった医療機関にシステム導入が向いているのでしょうか。
放射線科医が不在の医療機関
上記でも紹介してきた通り、画像診断医が不在の医療機関でも遠隔画像診断システムを導入することで、離れた場所にいる放射線科医に画像診断を依頼することが出来ます。
医療画像のプロフェッショナルによるサポートを受けられるため、診察に当たっているドクターの負担を軽減することが出来ます。
受診者数が増えている健診センター
日本国内の人口は減少傾向ですが、予防医療の受診者は増加傾向にあるため、受診者数が増加傾向の健診センターも多いのではないでしょうか。
繁忙期と閑散期の差が激しく診療体制を整備するのは困難です。
遠隔画像診断システムと読影サービスを契約し体制強化を図ることが出来ます。
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5.遠隔画像診断システムにかかる料金や費用
遠隔画像診断システムの導入はさまざまなメリットが得られることがわかりましたが、導入にあたってネックとなるのがコストの問題です。
システム導入にあたっては、大きく分けて導入時にかかる初期費用と、毎月発生するランニングコストの2種類があります。
それぞれどの程度のコストがかかるのか、詳しく見ていきましょう。
導入コスト (初期費用)
初期費用は、依頼送信端末機能と院内システムとの連携構築内容によって異なります。
院内PACS DICOM画像連携
医療画像を保管している院内PACSより画像をスムーズに取得するシステム構築です。送信側依頼端末、院内PACS側双方に接続費用が発生し、1接続150,000円~500,000円が相場であり、2接続相当分の費用が発生します。
院内レポート連携
送信側から返却された報告書を院内に配信するシステムに自動反映するシステム構築です。院内レポートシステムの仕様に沿ってインポートする形式になります。
各社調整費用を含め、800,000円前後が相場になります。
自動依頼連携
送信側に設置した依頼端末を直接操作することなく、電子カルテシステムやオーダリングシステム上から依頼送信するシステム構築です。各社調整費用を含め800,000円~2,000,000円が相場です。
依頼送信端末を購入する必要があれば、別途購入が必要です。
院内システムと連携を実施する際は、院内と院外のネットワークを仲介する必要があるため、GW機能(LANポート2つ)を有したPCを用意する必要があります。
事業者によっては依頼端末を貸出している事業者もあります。
なお、システム連携は必須ではないため、手動操作であれば初期費用を抑えることが出来ます。
クラウド型であれば初期費用が発生しないサービスもあります。
依頼送信件数が多い場合はシステム連携を検討する必要があるでしょう。
上記の金額はあくまでも相場であり、設置場所やその他条件によっては、別途配線工事や設置費用、設定費用などがかかる場合もあります。
ランニングコスト
オンプレミス型とクラウド型の違いで費用項目と相場が異なります。
オンプレミス型
月額基本料:5万円程度
クラウド型
月額基本料:3万円程度
従量課金:(例)CT/MRI400円/件(税別)
※従量課金が発生しないクラウド型遠隔読影システムもあります
いずれのタイプも毎月3~5万円程度の月額基本料を支払う必要があり、クラウド型であれば画像診断の件数ごとに従量課金が請求されるケースもあります。
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6.遠隔画像診断システムを選ぶ際のポイント
遠隔画像診断システムはさまざまな企業が提供しており、選ぶシステムによっても料金や導入プロセスなどが異なります。
どのような基準でシステムを選定すべきか、特に押さえておきたいポイントを紹介しましょう。
オンプレミス型かクラウド型か
院内に設置している画像サーバー側に遠隔画像診断機能を有しているケースもあります。
一度、使用している画像サーバーメーカーに問い合わせることをお薦めします。
ただし、新たに画像サーバーのクライアント端末を導入する必要があるため初期費用が大きくなる傾向があります。
クラウド型は導入まで時間が掛からず導入コストを低く抑えることが出来るため、お急ぎであればクラウド型を選択することをおすすめします。
セキュリティ対策は万全か
遠隔画像診断システムでは、患者の医療画像という極めてセンシティブな個人情報を扱います。
万が一、患者の個人情報とともに画像が漏えいした場合、医療機関は重大な責任を問われることになります。
そのため、遠隔画像診断システムの選定にあたっては、万全のセキュリティ対策が講じられているかを確認し信頼性の高い事業者を選ぶことが大切です。
一般的に、オンプレミス型よりもパブリッククラウドを使用したクラウド型システムの方がセキュリティが高いと言われています。
また、依頼端末からクラウドまでの通信経路をどの程度セキュリティー担保しているか確認してください。
匿名化を実施しているかということも重要なポイントです。
ソリューション力
医療機関には様々な医療システムが導入されており、撮影オーダーからレポート配信までの運用方法も多岐にわたります。
特に、検診読影の運用は独自性が強い傾向があります。
部位・所見マスターを統一しているのか、受託事業所毎にマスター管理しているのか、画像と受診者情報をどのようにマッチングしているのか、各施設ごとに違うため一つのパッケージに納めることは困難です。
そのため、運用方法を熟知した企業を選択することが重要になります。健診センターの導入事例があるか、どの程度の知識を担当者が有しているか商談しながら見極めましょう。
読影サービスを提供しているか
将来的に読影業務の外注を検討しているのであれば、遠隔画像診断システムと読影サービスを提供している事業者を選択しましょう。
読影事業者が設計した遠隔画像診断システムは遠隔読影の運用に特化しているため安心できます。
また、対応できる読影サービスメニューも事業者ごとに異なるため注意が必要です。
関連記事:遠隔読影サービスとは?必要な機器や導入すべき医療機関の特徴
7.YKR medical laboはORACLEクラウドを活用した遠隔読影システムを提供
遠隔画像診断システムの選定に迷っている、または選定したシステムで本当に問題がないか不安に感じる方は、ぜひYKR medical laboへご相談ください。
YKR medical laboでは、以下5つの遠隔読影システムから選択でき、自社でもシステムを保有しています。導入経験豊富なスタッフが各医療機関が抱える課題に応じて最適なシステムを提案させていただきます。
Virtual-RAD(株式会社ドクターネット)
プライバシーマークとISMS認証を取得済で高度なセキュリティ体制を確保。国内2拠点にデータセンターがあり、災害時にも大切なデータを保全します。
LOOKREC(エムネス株式会社)
Googleプラットフォームを活用したクラウド型遠隔読影システム。
他社と比較して圧倒的にスピーディーな診断が可能です。
RULA(株式会社neo)
Microsoftプラットフォームを活用したクラウド型遠隔読影システム。
Microsoftの知見を活かした強固なセキュリティとデータセンターによって支えられています。
RS_Base(株式会社Medical-In)
3,000施設を超える病院やクリニックへの導入実績があり、血液データや患者情報、動画・画像のデータをファイリング可能です。
Radi-Doc(YKR medical labo株式会社)
oracleクラウドを活用した最新の読影システム。
匿名化機能を依頼端末に実装しており、検診の運用に特化した遠隔読影システムです。
8.まとめ
遠隔読影システムを導入する際には、オンプレミス型かクラウド型いずれかのタイプを選択したうえで、利用するシステムのセキュリティやコスト、読影サービス機能などを総合的に評価することが大切です。
システム選定に不安がある、またはITシステムの導入や運用ノウハウがなく困っている医療機関の担当者は、YKR medical laboへご相談ください。
9.記事監修者紹介
監修者
顧問医 不破 英登
【経歴】
- 2009 愛知医科大学医学部医学科
- 2009 津島市民病院
- 2011 名古屋第二赤十字病院 放射線科
- 2016 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教
- 2018 豊田若竹病院 放射線科
- 2019 YKR medical labo株式会社 顧問医就任
- 2021 YKR medical consult 代表就任
【資格】
- 産業医・放射線科診断専門医