ブログ

遠隔読影サービスとは?必要な機器や導入すべき医療機関の特徴

日本国内では、人口一人当たりの画像診断装置数は世界一であると言われる一方、画像を正確に診断できる医師が長年不足している背景を前に遠隔読影サービスが普及しています。

遠隔読影サービスを提供する企業が増える中、どの企業の遠隔読影サービスを選べば良いのか、悩まれている医療機関も多いのではないでしょうか。

本記事では、遠隔読影サービスの実態について詳しく説明いたします。

サービスはどのような流れで行われているのか、具体的な運用方法、メリット・デメリット・費用、および、日本国内の法務的な観点(医師法)から遠隔読影サービスの立ち位置を分かりやすくご説明いたします。

>>YKRの読影支援サービスはこちら

1.遠隔読影サービスとは

遠隔読影サービスとは、病院やクリニック内の読影業務を企業や各種団体が外注業務として受託し医療機関に読影結果報告書を返送するサービスを指します。

“遠隔”とあるように、主に病院やクリニックで撮影されたCTやMRI等の医療画像を、インターネットを介して送受信し、読影結果報告書を依頼元医療機関に返送します。

前述した通り、遠隔読影サービスは医療機関から外注業務として受託し提供するサービスです。

遠隔読影事業者が、サービスを提供するにあたって必要不可欠な3つのポイント(①読影医師の確保、②システムの提供、③人材の確保)があります。

ポイント①読影医師の確保

まず、大前提として、医療画像の診断を行うには画像診断を専門とする医師が必要です

そのため、遠隔読影事業者は適切な画像診断医を確保し日々の読影依頼に対応できるよう調整しています。

診療画像を扱っている遠隔読影事業者は放射線科専門医を中心に確保しています。

近年では、予防医療の観点から検診画像の依頼が市場で増えているため、放射線科に限らず、消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、外科、眼科医師が所属しているケースが見られます。

日々ニーズは変化しており、検診画像に関しては専門領域の診療科医に読影をお願いしたいという声が強まっています。

また、医療機関より依頼される画像や波形データの領域が多岐にわたっており、読影医師を確保する力が遠隔読影事業者に求められています。

ポイント②システムの提供

読影医が大勢居たとしても、システムが整っていなければ医療機関から読影業務を受託することはできません。

遠隔読影システムに関して、詳細をお知りになりたい方はこちらをご参照ください。

一概に遠隔読影システムと言いましても、医療機関毎にシステムが違い、運用方法も違うためフレキシブルな対応を求められます。

そのため、独自のシステムを持つことで医療機関の運用ニーズに幅広く答えることが出来ます。

日々、医療機関のニーズに合わせて読影システムを改良することが、遠隔読影事業者の強みになるでしょう。

また、システムと似た側面から言うのであれば、セキュリティポリシーを医療機関側が求めるレベルに対応できるかどうかも重要です。

個人情報を匿名化しているのか、遠隔画像診断のシステムはどのような方式を取っているのか、データ通信はVPN通信に対応しているのか、はたまた専用線を用いた通信も可能なのか、医療機関が求めるセキュリティーポリシーに準じられるか、といったことは遠隔読影サービスを提供する上で必要なポイントになります。

ポイント③人材の確保

遠隔読影サービスを支えているのは読影医だけではありません。

適切にサービスを説明する営業スタッフ、日々の依頼を正確に処理し医療機関と正しくコミュニケーションをとるオペレータースタッフ、医療機関からの疑義照会に応じる専任スタッフ、複雑な会計業務を処理する経理スタッフを配置する必要があります。

小規模な遠隔読影事業者であれば、代表を務める医師が全ての業務を対応しているケースがありますが限界があります。

一般的な企業同様、人材の育成は不可欠です。

また、遠隔読影市場はニッチな市場のため汎用性の利く人材を確保することが困難です。

人材育成が全てにおいて重要と言えるでしょう。

>>YKRの読影支援サービスはこちら


2.遠隔読影サービス提供の流れ

では、どのように遠隔読影サービスは提供されるのでしょうか。

大まかに5つのセクションがあります。

一連の流れをご紹介します。

①依頼

医療画像を撮影した後、遠隔読影事業者から提供される読影依頼端末より送信を依頼します。

依頼送信の際には、診療もしくは検診の依頼なのか、モダリティ・依頼部位に相違が無いか、読影時に必要な付帯情報の添付、読影時の注意点に関してコメントを付与してから依頼送信します。

検診画像の場合は、シングル読影なのか、オーバーリーディングによるダブル読影なのか、ブラインドによるダブル読影なのか読影方式を選択する必要があります。

②受付

依頼送信後、遠隔読影事業者で受付を行います。
医療機関から送信されたモダリティ、部位、読影方式に応じて、どの読影医に割り振るか検討しマッチングさせます。

至急や早期返却の依頼であれば各読影医の余力状況を考慮し優先的に割振り、医療機関の要望通りに結果報告書を返却できるように調整します。

読影医師の特徴や得意領域に関して熟知している必要があります。

割振り後は、医療機関毎に指定された通常納期通り返却できるよう読影医をフォローします。

読影医より、読影中の質疑応答や緊急度の高い所見連絡があった際は、読影医に代わってオペレーターが医療機関に案内します。

③読影

依頼を割振られた読影医が読影を行います。

読影医の状況も様々で常勤先で勤務されている読影医もいれば、産休中の読影医、遠隔読影を専門としている読影医もいます。

各読影医の状況や環境は様々なため契約読影納期に準じますが、どのタイミングで読影するかは読影医自身に委ねられています

読影時には、依頼画像と共に送られてきた付帯情報や依頼コメントに目を通し、必要に応じて過去画像を参照します。

緊急度の高い内容や、追加の画像や情報が必要な際はオペレータースタッフに連絡をします。

その日のうちに全てを読影される読影医もいらっしゃれば、納期通りに読影される読影医の方もいらっしゃいます。

④返却

読影結果報告書を医療機関に返却します。

依頼システムによっては束(複数の依頼をまとめて)での返却や、読影完了後に依頼毎に返却する方式があります。

検診画像では束での返却運用、診療画像では依頼毎の返却運用が適しています。

遠隔読影事業者によっては、人工知能やレポートシステム側のチェック機能を強化し読影結果報告書に軽微なミスが無いよう対策を施しています。

返却前の査読を実施している遠隔読影事業者もいらっしゃいますが、全依頼の査読チェックの実施は困難を極めています。

結果報告書返却後に疑義照会があれば、大抵の遠隔読影事業者は再読影として再依頼を受けます。

再読影に関しては無償を選択している事業者が大半です。

⑤請求/支払

遠隔読影事業者の請求/支払業務は非常に煩雑です。

各医療機関との契約体系や使用しているシステムが一律でないことが多く、特殊条件の契約が多いのも事実です。

同様に、契約読影医への支払も複雑化しており、遠隔読影事業者が抱える課題の一つになっています。

関連記事:全身がん検査に使われるDWIBS(ドゥイブス)とは?費用や欠点を解説

3.遠隔読影サービスの注意点

遠隔読影サービスを導入するメリットやデメリットについては以下記事を参照ください。

遠隔読影事業者の視点でサービスの導入に関する注意点をお伝えします。

以前の担当読影医と比較されやすい

遠隔読影サービスを導入するきっかけとして、医師の高齢化や、退職、非常勤運用からの改善、遠隔読影会社の変更が挙げられるでしょう。

遠隔読影サービスを導入することで、読影リソースの確保という目的を達成することができますが、院内のドクターは以前の担当読影医と比較して評価されます。

以前の担当読影医と全く変わらない読影結果報告書にすることは不可能です。

対策として、現状のレポート内容を遠隔読影事業者に情報提供することで対策を練ることが出来ます。

また、疑義照会を細やかに行うことも重要です。

特に導入初動は院内ドクターからの意見をフィードバックするようにしてください。

読影事業者側でも担当読影医に周知し書き方や所見の拾い方を調整することが可能です。

遠隔読影サービスは院内読影に劣る

遠隔読影サービスは読影リソースを確保できるため、大変有意義なサービスです。

一方で、院内で行われる読影品質と全く同じものを提供できるかというと、そうではありません。

遠隔読影サービスは、依頼元医療機関から提供される医療画像と依頼情報を元に読影しますが、院内では細やかな既往歴、検査歴を確認することが出来ます。

院内読影と遠隔読影では情報量に圧倒的な差が出てしまうのが現状です。

そのため、読影依頼時に読影医が必要とするであろう付帯情報を細やかに記載して下さい。

読影依頼内容を明確に書くことが重要です。

”腹痛”、”熱源精査”、”スクリーニング”、などこのような端的な依頼内容ですと、読影に支障が出てしまいます。

ご依頼されるドクターがどの様な目的で読影依頼をしたいのか、外傷であればどの部位の外傷なのか、院内であれば簡単にわかる情報が遠隔読影では分かりません。

その点を踏まえた上で遠隔読影を導入する必要があります。

株式会社は診療行為を行えない

遠隔読影サービスにおいて、診療行為(読影)を提供しているのは遠隔読影事業者と思われがちですが、医師法上、株式会社は診療行為を行えません

実際の診療行為を行っているのは、遠隔読影事業者が契約している読影医です。

遠隔読影事業者が行っている業務は、依頼元主治医から提供される依頼画像と、契約読影医のマッチング業務、及び契約読影医が作成した結果報告書のとりまとめ業務になります。

なお、医師免許が無い限り内容の改変や訂正は出来ません。

読影内容や診断内容に関しては、遠隔読影事業者と契約している読影医師にあることを覚えておきましょう。

注意点まとめ

筆者の視点から述べるのであれば、遠隔読影サービスを選択するのは最後の手段です。

私が病院経営者であればファーストチョイスはしません。

まずは、人員を募集し、院内の医師に読影を依頼できないか確認し、万策尽くしたうえで、読影リソースを確保することができない場合の最終選択肢と捉えることをお薦めします。

また、遠隔読影サービスは院内読影に劣る事を踏まえて、読影結果報告書の院内確認を必ず実施してください。

遠隔読影事業者に既往歴や読影に必要となる情報を積極的に提供することで結果報告書の品質を向上することができます。

>>YKRの読影支援サービスはこちら



4.遠隔読影サービスにかかる導入費用・料金

では、遠隔読影サービスの導入コスト(初期費用)や料金の相場はどの程度でしょうか。

4.導入コスト(初期費用)

初期費用は、依頼送信端末機能と院内システムとの連携構築内容によって異なります。

依頼端末一式(依頼PC・VPNルーター)

院内システムと弊社読影センターと接続するための機材です。

院内システムとの接続、インターネットVPN通信を可能とします。

費用は250,000円程度が相場です。

既存PC、ソフトVPNであれば費用は発生しません。

院内PACS DICOM画像連携

医療画像を保管している院内PACSより画像をスムーズに取得するシステム構築です。

送信側依頼端末、院内PACS側双方に接続費用が発生し、1接続150,000円~500,000円が相場になります。

2接続相当分の費用が発生します。

院内レポート連携

送信側から返却された報告書を院内に配信するシステムに自動反映するシステム構築です。

院内レポートシステムの仕様に沿ってインポートする形式になります。

各社調整費用を含め、800,000円前後が相場になります。

自動依頼連携

送信側に設置した依頼端末を直接操作することなく、電子カルテシステムやオーダリングシステム上から依頼送信するシステム構築です。

各社調整費用を含め800,000円~2,000,000円が相場です。

読影サービス料金

読影依頼する検査毎に読影費用が発生します。参考までに弊社の読影サービス料金の一例をご案内します。

ただし、以下料金は弊社”ラジドク”システムを使用されるユーザー様に提供を限ります。

ご承知おきください。

  • 月額基本料金・・・30,000円/月(税別)

診療

  • CT/MRI画像・・・2,500円/件(税別)
    ※一症例あたり。部位・スライスカウント無し。

検診

  • ・胸部CR・・・180円/件(税別)
  • ・胃部RF・・・290円/件(税別)
  • ・MMG画像・・・600円/件(税別)
  • ・眼底画像・・・280円/件(税別)
  • ・CT/MRI画像・・・1,800円/件(税別)※肺がんCT、脳ドックMRIに限る
  • ・DWIBS・・・5,000円/件(税別)
  • ・各種US・・・600円/件(税別)

>>YKRの読影支援サービスはこちら

5.遠隔読影サービスを導入すべき医療機関の特徴

以下の課題を抱えている、医療機関が遠隔読影サービスの導入に適しています。

読影リソースの不足

遠隔読影サービスを導入することで、院内で保有している読影リソースを拡充し専門医による読影サポートを受けることができます。

これにより、院内医師の読影負担軽減、検査装置の拡充、検査数増加が見込めます。

各種専門医の知見

遠隔読影サービスを導入することで、専門医の専門知識を持つ者が、遠隔地域や小規模医療機関でも活用できるようになります。

これにより、専門医の不足がある地域でも高品質な診断を提供できる可能性が高まります。

費用削減

常勤読影医を雇用する財政資源を確保する上で、医療機関には一定の検査数を実施する必要があります。

しかし、無尽蔵に検査を実施できないため、全ての医療機関で常勤読影医を直接雇用できません。

遠隔読影サービスは、検査毎に費用が発生するため直接雇用の固定費を変動費に置き換えることが出来ます。

直接雇用と比較して運用コストを削減できる可能性があります。

関連記事:遠隔画像診断システムの導入に向いている医療機関とは?料金や仕組みを解説

6.遠隔読影サービスの導入の流れ

遠隔読影サービスと院内システムをどの様に接続する必要があるのか確認が必要です。

まず、撮影オーダーからレポート記載迄の全体の流れを把握し、どのパートに遠隔読影システムを組み込んで運用するかを検討する必要があります。

確認のポイントは以下の通りです。

A:院内PACS連携(目安:2~3週間程度)

  • 接続側PACSメーカーの確認
  • 接続方法(QR/ST)の確認
  • DICOMコンフォーマンスの確認

B:院内レポート連携(目安:1.5ヶ月)

  • 返却先システムの確認(レポートシステム/健診システム/電子カルテ等)
  • 返却するファイル形式の確認(PDF/CSV/XML等)
  • DICOMコンフォーマンスの確認
  • 仕様書の確認、および遠隔読影システム側、もしくは返却先システム側の仕様書で運用するか選択。
  • 必要に応じて開発

C:自動依頼連携(目安:2か月)

  • 依頼情報元システムの確認(RIS/健診システム/電子カルテ等)
  • 仕様書の確認、および遠隔読影システム側、もしくは返却先システム側の仕様書で運用するか選択
  • 必要に応じて開発

A~Cを組み合わせて運用するイメージです。

それぞれに接続先システム会社が異なるケースが大半のため、一概に断定的な期間を規定するのは困難です。

全てのシステム連携を実装する場合3ヵ月程度は見込みましょう。

なお、院内システムと連携せずに運用するのであれば、お申込み頂いた後、3日程度でサービスを開始することができます。

関連記事:遠隔画像診断システムの導入に向いている医療機関とは?料金や仕組みを解説

7.遠隔読影サービスを選ぶときのポイント

遠隔読影サービスを提供している企業にも得意/不得意な分野が存在しています。

医師を多く抱えて至急読影を迅速に行なえる企業もあれば、24時間365日で読影サービスを実施している企業もあります。

まずは、遠隔読影サービスに依頼したい内容を精査し当てはまる読影会社を探すことが先決です。

また、自社で遠隔読影システムを保有しているか、していないのか、依頼したい検査に対応しているか、将来依頼する可能性がある検査に対応しているか、サポートを受けたい診療科の専門医が所属しているか、確認することをお薦めします。

遠隔読影サービスの導入には、院内の運用に遠隔読影サービスを組み込む必要があるため、導入のコンサルテーションをしっかりと行なえる企業がお薦めです。

コンサルテーションを保有システム企業に委ねていたり、病院の要望任せにする企業はお薦めしません。

院内システムの知識に精通した専任の営業スタッフがいる企業は安心できるでしょう。

料金先行で遠隔読影サービスを選定するのはリスクが伴います。

関連記事:乳腺超音波検査とマンモグラフィー検査の違い|仕組み・メリットを解説

8.YKR medical laboは遠隔読影サービス「Ragi-Dock(ラジトク)」を提供

YKR medical labo株式会社では、医療機関様向けに遠隔読影支援サービスを提供しています。

放射線科の枠を越えて、各種診療科専門医と契約し、健診に特化した読影支援サービスを展開しています。

もちろん、診療分野にも対応しています。

超音波・心電図・眼底・内視鏡の読影にも対応しており、検査科領域の読影支援サービスを強化しています。

システムを自社保有し、健診センターの運用に寄り添ったサービスの案内が可能です。

導入コンサルテーションに10年以上携わっている営業スタッフが複数在籍し、遠隔読影サービスの導入支援を行っています。

詳しくはお問合せ下さい。>>YKRの読影支援サービスはこちら

9.記事監修者紹介

監修者

顧問医 不破 英登

【経歴】

  • 2009 愛知医科大学医学部医学科
  • 2009 津島市民病院
  • 2011 名古屋第二赤十字病院 放射線科
  • 2016 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教
  • 2018 豊田若竹病院 放射線科
  • 2019 YKR medical labo株式会社 顧問医就任
  • 2021 YKR medical consult 代表就任

【資格】

  • 産業医・放射線科診断専門医

 

 

CONTACTお問い合わせ

YKR medical laboに関して、ご質問・お問い合わせのある方はこちらよりご連絡ください。

提携企業