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所見コード活用のメリットと運用ポイント

所見コードとは

所見コードとは、画像検査や健診で見つかった所見を標準化して記録するためのものです。

文章だけで読影結果を入力すると、医師ごとに表現がばらつきやすく、解釈に違いが生じる恐れがあります。

そのため、あらかじめ定義された所見コードを使うことで誰が入力しても同じ意味で扱えるようになります。

実際には、PACSやRIS、健診管理システムなどの導入時に学会や公的規格を参考にしつつ、施設ですでに使用している内容を加えることが一般的です。

また、市町村や健診機関ごとに独自の所見コードを整備しているケースも多く、施設によっては50〜60種類以上の所見コードを使い分けて運用している例もあります。

所見コードは決められた仕組みに沿っているため、1種類の所見コードだけでは運用上も管理上も柔軟な対応が出来ません。

施設内では内容の工夫によって、業務フローに合わせて所見コードを使い分けることで、正確な情報記録と効率的な業務の両立が可能となります。

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所見コードの役割

所見コードは、単なる入力補助だけではなく、医療データの活用基盤として多様な役割を持っています。

文章だけの所見記載では表現の違いや解釈のズレが生じやすいのに対し、所見をコード化することで誰が読んでも同じ表現を扱えるようになります。

また、所見コードを使うことでシステムへの自動入力や集計が容易になり、健診結果の管理やレポート作成の効率化に役立ちます。

さらに、遠隔読影や医師交代など、複数の医師や施設が関わる場面でも、所見コードが“共通言語”として機能するため、情報の引き継ぎや共有がスムーズに行えます。

つまり、所見コードは読影内容の正確性を保ち、業務を効率化し、医療スタッフ間の情報伝達を円滑にする役割を担っています。

所見コードを利用するメリット

記載の標準化による読み違い防止

医師ごとに所見の書き方や表現が異なると、解釈に迷うことがあります。

所見コードを利用することで、文章のニュアンス差や誤字脱字による誤解を減らし、統一された表現で記録することが可能になります。

これにより、確認作業や解釈の手間を削減し、より正確な読影情報を共有できます。

レポート作成・集計の効率化

所見コードを基に自動で文章を生成する仕組みを活用すれば、入力時間の短縮が期待できます。

また、同じ所見コードを用いることで年度別・検査別の集計や統計処理が容易になり、健診結果の傾向分析や施設内データの活用に役立ちます。

システム連携の円滑化

多くの健診管理システムやPACSでは所見コードとの連携機能があり、遠隔読影後の結果反映が自動化しやすくなります。

特に巡回健診など大量のデータを扱う場合、コード入力による一括取り込みが可能となり、作業負荷を大幅に軽減できます。

医師交代時や外部委託先変更時のスムーズな引き継ぎ

読影医が交代しても、共通の所見コードを用いることで解釈のブレが少なく、継続的に一定の品質を保つことが可能です。

また、遠隔読影会社を切り替える場合でも、所見コードを共有することで調整しやすくなります。

所見コード利用のデメリット・課題

所見コードは読影業務の標準化やデータ活用に非常に有効ですが、導入・運用にはいくつか注意すべきポイントがあります。

ここでは代表的な課題を4つに整理して解説します。

初期導入時の操作負担

遠隔読影会社が提供する所見コードを利用する場合、施設側では最初にコードの選択やシステムへの取り込み方法などに慣れる必要があります。

このため、導入直後はスタッフが操作に不安を感じるなど、入力手順の確認に時間がかかることがあります。かかることがあります。

ただし、施設が既存のコードを活用できる場合や、操作に慣れることで負担感は徐々に軽減されます。

表現の柔軟性が制限される

所見のコード化は標準化や統計処理の効率化に有効ですが、複雑な所見や微妙なニュアンスの表現には自由記載の方が伝わりやすい場合があります。

所見コードに該当しない内容は、フリーレポートなどを活用して柔軟に対応することが重要です。

コードの改訂更新・管理が必要

学会規格や施設独自コードは改訂されることがあり、システム更新や調整(マッピング)の見直しが必要になる場合があります。

また、標準規格とのマッピングは外部連携を行う場合には有用ですが、院内完結の運用であれば必須ではありません。

更新や管理は継続的に行う必要がある点がポイントです。

初期教育・運用ルール整備

導入時には医師や技師への教育が欠かせません。

また、コード選択基準を統一していないと、同じ所見でも入力者によって選択肢が異なる“バラつき”が発生することがあります。

さらに、施設の運用に応じて所見を追加・細分化するケースもあるため、運用ルールは継続的に見直すことが望ましいです。

所見コード体系の更新が必要になるタイミング

胸部X線をはじめとする健診や医療機関での画像診断において、所見コード体系は一度導入したらずっと同じものを使い続けると思われがちです。

しかし、実際には途中で別のコード体系に切り替わるケースも少なくありません。

背景にはいくつかの理由があります。

まず多いのがシステム更新やベンダー変更に伴う切り替えです。

PACSや健診管理システムをリプレースする際、新たに導入するベンダーのコード体系に合わせる必要が生じます。

その際には、旧コードと新コードの対応関係を整理する「マッピング作業」が欠かせません。

これは過去のデータを正しく引き継ぐために必須となります。

次に、施設側の運用見直しによる変更です。

たとえば「結節影」という大きなくくりを部位別に細分化して記録精度を高める場合や、逆に健診での統計処理を簡略化するために細かいコードを統合するケースがあります。

施設の方針や業務効率化の観点でコード体系の見直しが行われるのです。

さらに、法規制や保険制度の変更も影響します。

検診の判定基準が改定されたり、保険請求ルールが変更されたりすると、それに対応したコードの修正や置き換えが求められることがあります。

このように、所見コードは固定的なものではなく、医療機関や健診機関の運用、制度改正、システムの更新など、さまざまな要因で変更され得る仕組みです。

変更が必要になった場合には、現場の混乱を避けるために十分な移行準備とマッピング作業が重要となります。

遠隔読影×所見コード

遠隔読影を依頼する際、依頼内容や返却結果をフリーレポートの文章だけに頼っていると、依頼側と読影側の間で表現のブレや解釈の違いが生じやすく、確認や修正が必要になることがあります。

その点、所見コードを導入すれば、依頼時点から共通の枠組みでやり取りできるため「どの所見を求めているのか」「返却された結果をどのように扱うのか」が明確になります。

これにより依頼作業がシンプルになり、依頼内容の伝達ミスや再確認の手間を減らすことが可能です。

さらに、所見コードを活用することで、施設内での入力・変換作業が削減されるだけでなく、返却結果を健診システムにそのまま反映できるため、運用の安定性も高まります。

特に巡回健診や検査件数の多い施設では、依頼から結果確認までの流れがスムーズになり、結果的にスタッフの負担を軽減する効果が期待できます。

注意すべき点

所見コードの導入にあたっては、施設ごとに利用しているシステムや運用ルールに合わせたマッピングが必要です。

また、コード体系は完全に統一されているわけではないため、遠隔読影会社との事前の取り決めが欠かせません。

とはいえ、一度整備しておけば将来的に読影会社を切り替える際もスムーズに移行できるという利点があります。

関連記事:遠隔画像診断支援サービスとは?導入費用や遠隔読影との違いを解説

関連記事:遠隔画像診断システムの導入に向いている医療機関とは?料金や仕組みを解説

まとめ

所見コードは、読影現場における標準化と効率化を支える大切な仕組みです。

誤解の少ない情報伝達やシステムとの円滑な連携、さらに統計や研究への活用など、多くのメリットがあります。

一方で、入力作業が増えることや表現の自由度が制限されること、コード更新に伴う対応が必要になることなど、運用上の課題も存在します。

そのため、導入や継続運用には一定の工夫や労力が欠かせません。

特に遠隔読影では、異なる施設や複数の医師が関与するため、所見コードが“共通の言葉”として大きな役割を果たします。

標準化されたコードを用いることで解釈の違いを減らすことができ、結果の自動取り込みや一括処理も可能となり、業務効率が向上します。

また、読影医の交代や委託先の切り替えといった場面でも、所見コードがあることでスムーズな引き継ぎができ、医療サービスの継続性を保つことができます。

所見コードは単なる入力方式ではなく、医療の質と効率を大きく左右するインフラとも言えます。

メリットと課題を理解しながら活用を続けることが、今後の健診・読影業務における安定した運用につながると考えられます。

YKRでは同一モダリティ内で複数の所見コードを利用することができる所見コード選択機能を搭載しています。

企業や健保団体ごとに異なる所見コードがある場合でも、依頼束単位で設定が可能です。

遠隔画像診断支援サービスについてのご不明点等お気軽にご相談ください。

記事監修者紹介

監修者

顧問医 不破 英登

【経歴】

  • 2009 愛知医科大学医学部医学科
  • 2009 津島市民病院
  • 2011 名古屋第二赤十字病院 放射線科
  • 2016 名古屋市立大学大学院医学研究科 放射線医学分野 助教
  • 2018 豊田若竹病院 放射線科
  • 2019 YKR medical labo株式会社 顧問医就任
  • 2021 YKR medical consult 代表就任

【資格】

  • 産業医・放射線科診断専門医

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