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遠隔読影を導入する前に知っておきたい心電図のDICOM化について

DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)は、医療画像の標準フォーマットとして広く採用されており、さまざまな医療機器間でのデータ共有を可能にします。

健康診断において、心電図検査は循環器疾患の早期発見に不可欠な検査のひとつです。

しかし、従来の心電図データの取り扱いには、紙ベースの記録や機器ごとのフォーマットの違いによる管理や、手入力作業、用紙・ラベルシールの消耗品購入など、さまざまな課題がありました。 

これらの問題を解決するため本記事では、健康診断における心電図データのDICOM化がもたらすメリットについて、遠隔読影や業務効率化の観点から解説します。 

DICOM化のメリット 

心電図のDICOM化とは、心電図の波形データやECGファイルをDICOMフォーマットに変換し、PACS(医療用画像管理システム)で管理できるようにすることを指します。

従来、心電図データは紙に印刷したものが多く、稀にPDF形式で保存されることがあります。

他の医療データと一緒に情報共有(総合判定など)をする際は保存するシステムが異なり、総合判定業務が煩雑になりがちです。

その過程で入力ミスや紛失のリスクが生じる可能性もあります。

しかし、心電図をDICOM化することで、PACSでの管理が可能となり、紙出力やFAX送信の必要がなく、データをそのまま送信することができます。 

さらに、院内の情報をDICOMフォーマットに統一することで、過去の心電図データと現在の検査結果を迅速に照合でき、経時的な変化を正確に把握できます。 

データの正確性と安全性の向上 

心電図のDICOM化には、データの正確性を担保するというメリットもあります。

DICOMでは、波形データや測定値、患者情報などを一元的に管理できるため、データの欠落や変換ミスが発生しにくくなります。

また、DICOMは、医療情報のセキュリティ面にも配慮された規格であり、データの改ざん防止や暗号化による保護機能が組み込まれています。

これにより、遠隔地へのデータ送信時も安全性が確保され、患者情報の漏洩リスクを低減できます。 

遠隔画像診断の活用が容易になる 

近年、遠隔画像診断支援サービス(遠隔読影)を導入する医療機関が増えています。

その背景には、慢性化した放射線科医の不足や読影業務の負担軽減といった課題があり、遠隔読影がそれらの解決策として注目されているからです。

しかし、遠隔読影をスムーズに運用するためには、画像データを適切なフォーマットで管理・共有できることが不可欠です。 

郵送での依頼を受けている会社も減少傾向にあり、現在ではほとんどがDICOM画像での依頼が主流となっています。

遠隔読影を導入する際、新たにシステムを構築するのではなく、既存の診療システムとスムーズに統合できることが理想的です。

DICOMは、CTやMRIだけでなく、PACSや電子カルテとも親和性が高く、心電図データも同じインフラ上で管理できます。

遠隔画像診断を導入する際、読影医に心電図データを共有する必要があります。 

基本的にはDICOM化されているデータの場合、一度USBに画像を落としていただき、 依頼端末にアップロードし、依頼先の医師が読影をいたします。 

DICOM化されていて、DICOM接続もしていれば、PACS経由で迅速にデータを送信でき、USBを介さず送信可能です。 

関連記事:検診の遠隔読影で医療機関が得られるメリットとは?

DICOM化のデメリット 

心電図のDICOM化は、データの一元管理や診断の効率化、医療機関間での情報共有といった多くのメリットをもたらしますが、その一方で、いくつかの課題も考慮する必要があります。

まず、DICOM対応の心電計やPACSとの連携システムを導入するには機器やソフトウェアの購入、インフラ整備などの初期費用がかかります。

また、DICOMデータはPDFやXML形式に比べて容量が大きくなるため、ストレージの負担が増加し、長期保存のための適切なデータ管理が求められます。

さらに、従来の紙運用から移行する際には、スタッフの業務フローの変更が必要となり、一時的な混乱や習熟までの時間が発生する可能性もあります。

システム障害時のリスクといった課題も考えられるため、導入にあたっては十分な準備と適切な運用体制の整備が求められます。

DICOMデータを適切に扱うための知識や運用体制の整備が求められ、システム障害が発生した際にはデータにアクセスできなくなるリスクも考えられます。

これらの点を踏まえ、心電図のDICOM化を進める際には、単にシステムを導入するだけでなく、運用方法やバックアップ体制の整備を含めた総合的な対策を講じることが重要といえます。 

まとめ 

心電図のDICOM化は、データの一元化や遠隔画像診断の円滑な運用など、多くのメリットをご紹介いたしました。

特に、遠隔読影の普及に伴い、DICOMフォーマットでのデータ管理が標準化されつつあるため、医療機関にとって今後の大きな課題となります。 

一方で、DICOM化にはシステム導入の初期コストやストレージ負荷、運用変更に伴う業務フローの見直しなど、いくつかの課題があるため、導入前の準備が欠かせません。

円滑な移行を実現するためには、段階的な導入、スタッフ教育、適切なストレージ管理、障害対策の整備などを進めることが重要です。

DICOM化を検討する際は、自院の運用に合った方法を選択し、導入後の運用を見据え、事前のテスト運用や小規模導入から始めるのも有効な手段です。

実際の業務フローに沿った検証を行うことで、予期せぬ課題を早期に発見し、スムーズな本格運用へと移行しやすくなります。

また、技術的なサポートを受けながら導入を進めることで、運用開始後のトラブルを最小限に抑えることができます。

DICOMデータの管理やバックアップ体制についても事前に検討し、長期的な運用を見据えた計画を立てることが重要です。

心電図のDICOM化は、単なるデータフォーマットの変更ではなく、診断の質の向上や業務効率化にも貢献する取り組みです。

自院の診療体制や将来的な医療環境の変化を考慮しながら、最適な方法で導入を進めることで、より安全で効率的な診療環境を実現できるでしょう。 

YKRメディカルラボでは、70名からなる各科を網羅した専任医師が所属しています。 

当サービスは医療機関担当医制を採用。

専属の読影医師がパートナーとして医療現場を支えます。

前項でも書きましたが、テスト運用や小規模導入から始めることも有効な手段であり、弊社では解約手数料を設けておらず、少ない件数から依頼が可能でございます。 

読影業務でお困りの際は是非ご相談ください。 

監修者紹介

監修者

循環器内科医師:中村 誠之

略歴

2012年 福岡大学卒業

2012年 名古屋第二赤十字病院

2016年 福岡大学病院 循環器内科

2021年 福岡大学医学研究科先端医療科学系専攻博士課程

2022年 ちくさ病院 循環器内科医長

所属学会

日本内科学会

日本循環器学会

日本抗加齢学会

認定資格

日本内科学会 認定医

日本循環器学会

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